GEISAI#1

皆さん、こんにちは。
当イベント「GEISAI」実行委員会のチアマン、アーティストの村上隆です。
この大きなイベントを開催するにあたり、内容と開催の動機をお話させて頂きます。

「GEISAI」=「ゲイサイ」=「芸祭」=芸術の祭典。

すなわち読んで字のごとく、芸術ジャンルのお祭りの創出が当イベント開催の主旨です。 英語に直訳するとARTFESTEVAL。 あまりにそのまんまなので英語表記は日本語そのままで「GEISAI」とします。

プロフェッショナル、アマチュア達の、芸術を媒介にした出会いの広場としての機能。 そして芸術のエンターテイメントな部分の再検証、再提案。 コンペやプロデヴュ-を想定したスカウト。 パフォーマンスやコンサート、参加者の作品の展示即売。

こうした盛り沢山の要素を合体した芸術複合イベントそれが「GEISAI」です。

名前の由来は、通称「ゲイサイ」と呼称されている、美術系学校の学園祭の呼び名から来ています。 私自身もかつては東京芸術大学の学生でした。 当時の学園祭の興奮は、その後のプロとしての展覧会やイベントの製作実行と比べても、 特別に楽しい思い出として残っています。 いや、それどころか、私の人生の中での一つのハイライトだったとも言えましょう。

出会いや興奮、論争や商いの真似事が、自分達が作った作品やグッズ、 イベントを経て観客にアピール出来る。それらの混沌が一瞬にして同じ場で展開する。 そんな学園祭だった「ゲイサイ」を、さらに整備し直し、開かれた場で公開してゆく。 ここに、開催にあたっての大きな力点があります。

同人誌即売会のコミックマーケットや造型狂の祭典ワンダーフェスティヴァル等、 オタクを軸に創造物をプレゼンテーションするイベントは、すでに十数年の歴史を数え、 毎年毎回、参加者の数を増やし続けています。 アマチュアリズムを前面に押し出し続けてきた2つのイベントですが、 それ故に参加者への裾野が拡がり、数万人、数十万人規模で毎回参加者が集っています。

この2つのイベントが当「GEISAI」を製作して行く上での雛形となりました。 こうした先人に比べれば、遅れてのスタートではありますが、 2002年春、芸術の祭典「GEISAI」をここに開催したいと思います。

各イベント開催の主旨

1.「GEISAI1-GP」
「ゲイサイ-1ジーピー」と呼びます。これはコンペ=公募です。 日本の若手アーティスト希望者は、公の場に自身をアプローチする手始めとして、 まずコンペ=公募に出すケースが多いのです。 それはこの20年間、様々なコンペが出ては消えて行きましたが、変わらないムーブとして、 または、企業の広告媒体の一つとして、今もあり続けています。

さかのぼれば、日展や二科展のようなジャイアント公募展も日本の芸術の代表選手だった訳ですし、 コンペ=公募は日本の芸術を考える上では避けては通れない関門とも言えます。 そのコンペ=公募のニーズの高さに応えるとともに、その意味そのものを再検証する。 そのために、本来インディペンデントな生き方の提示そのものがコンテンポラリーアーティストの アイディンティティであったという定説を覆し、 アーティスト側からコンペを開催するに至ったわけです。

GPのコンペには2つのチャンスがあります。

1つめは特別審査員による金、銀、銅、3賞の選出です。 この審査員の方々の顔ぶれにも注目して下さい。 新しい芸術の発見には様々な分野の方々の目が必要と思われます。

まず日本現代美術業界の重鎮。草間弥生さん。 80年代初頭から日本グラフィック大賞やア-ヴァナード等のコンペとともにグラフィックブームや アーティストムーブメントを造り上げ続けてきた日比野克彦さん。 俳優として確固としたインディペンデントな生き方を提示し続ける浅野忠信さん。 Mr、「日本、現代、美術」美術評論家の椹木野衣さん。 私、村上隆も参加します。 これらの審査員で、明日のアートの可能性を探し出します。

2つめはスカウト審査です。
いわば、芸術版スター誕生。アーティストの卵達を求めてスカウトするのは、 日本のクリエイティブを支える、ギャラリーやタレントマネジメントプロダクション、 雑誌編集部やTV番組制作部の面々。ダイレクトなプロデヴュ-のチャンスです。 そしてこのスカウト審査の設定により、今までのコンペとは全く違った側面も生まれます。 すなわち、アーティストの育成。スカウトしたプロダクションやギャラリーは、 それぞれのアーティスト達とともにビジネスをスタートさせることになります。 そこに待っているのは、甘えや言い訳が成り立たない、プロへの厳しい道のりです。 しかし、その道程においてこそ、アーティストは育成されていく。 この2つのコンペ=公募の審査設定により、従来のコンペが見せることのできなかった、 プロへの道のりが、ハッキリと提示されているのです。

2. 作品の展示即売
芸術作品制作を生業としてゆくことは、極めて困難な道のりです。 一つには、販売ラインの不透明さが大きな壁となっていること。 バブル経済時に投機の対象として悪名を馳せたアート業界は、 いまだその信用の回復には至っておらず、ダークな取り引き商として認識されています。 また、アートマーケットの流通のリアリティにおいても、一部の経済的エリート、 もしくは極度に先鋭化された愛好家によってのみ購入可能な価格設定により、 一般社会人には全く馴染めない物体となってしまっています。

a.流通の不透明さの撤廃し、アートの信用を取り戻す。
b.馴染みやすい価格帯の作品の提供。

これが「GEISAI」内における、プロ・アマの垣根を越えた作品展示即売のコンセプトです。

先に上げたコミックマーケットやワンダーフェスティヴァルは、 基本的にはアマチュア達が作品を持ち寄り、会場で即売し、 お客さんと作家が金銭のトレードを媒介として時間と空間を共有する。展示そのものよりも、 そうした空間の創造こそが、多くの人々を集め続けるエネルギーを生んでいると思います。

プロディーラーは業界の信用回復と基準点の再設定。 アマチュア達は功名と作品を売る喜び。 これらを実現し続けることで、上記a,bのコンセプトが成就されていく。 即売を基準にした表現の提案が、アートの新しい扉を開くと考えます。

3. プロブース参加の意味
ヨーロッパやアメリカにおいて、アートフェアは歴史のあるイベントです。 しかも、日本ではなじみの薄い現代美術が、大きなフェア、マーケットを形成しています。 日本においても、東京美術倶楽部等が主催する、一部の愛好家向けの昔ながらの交換会の延長線上に 位置する疑似アートフェアや、NICAFのような完全に西洋型のアートフェアは見受けられます。 ただ、これらの全てのアートフェアを見ながら、私個人は不完全さを感じ続けてきました。 西洋のも日本のにも。自分たちのリアリティとはなにかがズレている、という感覚です。 では、なにが日本のアートマーケットにおいてリアルであり、求められているのか。 プロだけでは敷き居が高すぎる。アマチュアだけでは方向性が見えない。

従来のフェアを検索し、私なりに出した答が、 プロ・アマの混合アート展示即売会「GEISAI」の総体でした。 今回参加して頂いたプロブースの皆様は、若手の画商さんを中心に、 キャラクタービジネスコンテンツ開発企業、おもちや企業、コンピュータハードウェア制作会社などなど、日本のクリエイティヴ産業の要となる、まさにプロフェッショナルな方々です。

プロブース設置が担うもの、それは、「GEISAI」の信用です。 プロとアマ、双方が同時にプレゼンテーションされることにより、プロへの信頼が回復され、 同時に審美眼の鍛練の場の提供される。 日本における芸術・アートの市場への参加のバリア融解を試みたい。 これは、そのための実験でもあるのです。

4、真のお祭りを目指して 最初に、私自身が体験した美術大学時代の学園祭の楽しさを目指す、と書きました。 目的を同じくする人間達が集まり、ややこしい事は抜きにして催す、お祭りの楽しさの再現。 コミックマーケットやワンダーフェスティヴァルにおいては、 このハレの気分をコスプレーヤー達が体現しています。 我々の「GEISAI」も、今後コンサートやパフォーマンスを積極的に取り入れ、 学園祭的な空気否、真のお祭り的なる演出をして行きたいと思っています。 新しい価値観を共有する人々の真のお祭り。 これを「GEISAI」は作って行きたいと考えています。

まだまだ不馴れな点、至らぬ点がお目に留まるかとは存じますが、 内容・運営ともに経験値を積み、毎回グレードアップしたイベントを提供させていただく所存です。

では、皆さん「GEISAIー1」をどうぞお楽しみ下さい。

 

(GEISAI#1 パンフレットより)