GEISAI#5

皆さん、こんにちは。 GEISAIチアマンの村上隆です。 GEISAIも数を重ね、いよいよ3年目の春を迎え、昨年末の「GEISAIミュージアム」を経て、 通算で6回目となりました。 そして横浜に帰ってきた「GEISAI-5」!!パシフィコ横浜にて開催します。

GEISAIはいつも驚きがテーマ。
今回はGEISAI審査員として、なななんと、ユーミンの登場です。 そしてもう一人のニューフェイスは曽我部恵一さん<ミュージシャン>です。 この審査員選出に驚いた方も多いはず、というか私自身が一番驚きました。 他3名の審査員の方々は過去にも参加してくださっている方々です。 安野モヨコさん<マンガ家>(2回目、芸術道場GP)奈良美智さん<アーティスト> (3回目、芸術道場GP、GEISAI-2)日比野克彦さん<アーティスト>(3回目、GEISAI-1、3)

まさに日本のカルチャーシーンを代表する方々達です。 とにかく驚きこそがGEISAIの真骨頂。なんと言ってもお祭りなのです。 今回のような審査員の顔ぶれはGEISAIでしか実現できません。 ユニークな審査員たちが決定する、最高の作品はどんなものになるのか。 どうかみなさん、ご期待ください。

「アートを売る、買える」現場としてのGEISAI。
「GEISAI」も通算6回を迎え、「プロデビュー」と共に、我々の目指した課題「アートマーケットの拡大」も徐々に形になってきました。昨年末に行われた「GEISAIミュージアム」ではその兆候がそこかしこに見られました。1位の木下雅雄くんは審査員の北原照久氏が9点も購入され、また1位受賞作品そのものにも、2体分ものバックオーダーが入ったとのこと。一方、神話や少女のヌードを融合した油彩画を描く、松山 賢さんは今まで一度の入賞もしていませんが、毎回作品売り上げ実績を伸ばしてきて、遂に「GEISAIミュージアム」では「100万円」を突破。

彼自身のマーケットをGEISAIをきっかけに探し当てました。さらに常連の岩崎 由紀子さんはペインティング11点、ドローイング36点が合計47点が午前中で完売!こうした突出した出展者の登場で、審査と別の価値観も生まれ始めています。実際、「GEISAIミュージアム」出展者の作品販売実績は、参加者全体の過半数に至ったという集計結果も出ました。GEISAIへ来るお客様が、作品を見るだけでなく、「購入しよう」という意識をもって来場し始めている証明と言えるでしょう。

「オーダーできます」PROJECT!始動
こういった流れの上で、今回、GEISAI実行委員から新提案させて頂くのが「オーダーできます」PROJECT!です。これは会場でお客さんが作家に「自分の欲しい」作品をオーダーし、納品までお願いするシステムです。いわば「観客参加型の注文芸術」です。出展者には既にメールでお知らせしていますので、今回の「GEISAI-5」から会場でオーダー可能なブースには「オーダーできます」というサインボードが掲げられているはすです。

この企画誕生のきっかけは高級紳士靴のブランド、ベルルッティ(LVMHグループ)のプレス秦麻理子さんとお話した時でした。「GEISAIミュージアム」にご来場頂き、非常におもしろかったがアクティヴィティをお客の側からもてないのが不満であった、とのこと。麻里子さんがおっしゃるには「ベルルッティ」は近年、靴の種類、色だけでなく、お客の希望に沿ったモチーフのタトゥのデザインまでをも自由に選んでオーダーできるサービスをスタートさせ、大変に好評を得ているとのこと。そのオーダーシューズの値段はなんと数十万円にも上るが、今そういったワンアンドオンリーな靴が流行しはじめていて、靴専門の雑誌まで刊行されるに至っている状況がある。業界が盛り上がるには情報発信者と受信者、相互のコミュニケーションが大切であり、一方通行で独りよがりな自称御芸術では、なかなか売れる物でも無かろう、といった見解を頂きました。また、ルイヴィトンジャパンの社長である秦 郷次郎様とアート作品の販売について意見を伺っていたら以下のような参考例を頂きました。

ヨーロッパの写真家グレゴリー・コルベール氏のお話し。
クジラや象など動物と人間のコミュニケーションをモチーフに撮影するコルベール氏は、縦5m横20m級の大きな和紙に乳剤を塗り、写真を転写するという特殊な技法を使う写真アーティスト。ヴェニス・ヴィエンナーレの行われているヴェニスの船舶ドックでの展覧会では上記の巨大作品を展示。撮影はインド、ビルマ、スリランカ、タイ、エジプト、ドミニカ、トンガへ10年間、遠征して行ったようです。また動物の言葉がわかると言う彼は、特殊なスタイルで作品をかなり売っていて、クライアントを島に招待し、空を飛ぶ鷲を近くに呼んで客人たちの肩へ止まらせる。その様子を撮影したものを、各々作品として販売する。つまり島のパーソナルな体験とパックした参加型芸術としてアートを売っているというのです。

このように「何でも手に入る」現代の消費者達は、自分だけのオリジナルを求める気持ちが強くなってきている傾向があり、よりパーソナルに近いものが求められています。そんな風潮の中で、もともと一点ものが基調のアートの世界でもより個人的な作品を依頼することは、究極のアートの形とも言えるのではないかとお話を頂いたのです。

「作品を造って売ってそして生きる。」
私自身も若い頃に受注制作を請け負いました。オーダーに応じて行く中で、作品に「自分の主張が込められているのか?」という疑問に苦しんだり、さらに作品を売り、食っていく行く足がかりとして「お金」という問題にも向き合ったりもしました。 アマチュアがそこに乗り出すのは勇気の必要な事です。これまでのように孤独に作品と対峙、戦うのもよいかもしれません。しかしプロとしていずれ必ず向き合う「受注作品とアーティストの主張との葛藤」という場に駒を進めてみるのも面白いのではないでしょうか。

但し、作品の受注システムというのはコミュニケーションとしては難易度が高いものです。
お客様が「こういう作品を創って欲しい」と言っても、やがて冷めてしまったり、作家も創りたくない作品をオファーされ、苦しんだ結果、作品が仕上がらない、という事もあるからです。本来、こういう「ややこしい事」を代行する役目がギャラリーや、エージェントなのですが、その「ややこしさ」は取り分として、作品売り上げから随分な額を引かれます。しかし「GEISAI」ではそんな他者に頼らず、自分で取り仕切る事が可能な場なのです。

とにかく作品を売る、買うという行為は作品を造ることとは違ったダイナミズムが溢れています。お客様の中には、作家の気を引くため、適当なオーダーをしてくる人間もいるかもしれません。そこでは、現金のみの取引や念書をしっかり取ったりといった、自己プロテクションも重要です。同時に、アーティストも「約束を守ること」が重要です。前金を頂きながら、期日にクライアントに作品を届けられないなら、それは詐欺行為と一緒です。オーダーされる側、する側、双方のルールを決めて、コミュニケーションをして、「約束」を守れれば大きな成果が期待できます。やり方次第では同人誌の祭典コミックマーケットやフィギュアの祭典ワンダーフェスティバルのように「GEISAIだけで食べてゆける」ことも可能になるかもしれません。

今まで出展者は作品を制作し、審査の評価で精一杯だったかもしれませんが、そろそろお客様との関係も考え初めてはいかがでしょう。GEISAIは作家志望のイベントであると共に、一般のお客さんにも楽しんで頂ける開かれた未来型のアートフェスティヴァルなのですから。本線審査同様、この新企画「オーダーできます」プロジェクトにも是非ご注目下さい。

尚、大変申し訳ありませんが、このプロジェクトについてのトラブルに関しては、GEISAI実行委員会及び、有限会社カイカイキキは一切の責任を持ちかねます。その点を十分ご了承いただき、御注意して運行して頂けますよう、お願いいたします。

(GEISAI#5 パンフレットより)